2023/05/20

栖来ひかりさん著『日台万華鏡』

  台北在住の作家・栖来ひかりさんのエッセイ集『日台万華鏡―台湾と日本のあいだで考えた』(書肆侃侃房)。
 飲食、コロナ、ジェンダー、生と死、映画、民芸など多岐にわたるテーマの下に、台湾と日本の、たくさんの小さな物語が、景色が、次から次へとつむがれていくさまは、まさに万華鏡をのぞいているかのよう。物語同士のつながれ方も絶妙で、映画のようともいえるでしょう。それらはしばしば読み手のステレオタイプを消してくれます。一例は外国人労働者で、貧しさゆえに家族と引き離されて重労働に従事している、というイメージとは相容れない、自由を享受する彼らの一面も描かれている(私も故郷に不動産を八つも持っているハウスキーパーを知っています)。
 台湾ばかりでなく、激動する「現代」について考えさせてくれる一冊です。